「芝浜」「紺屋高尾」など、古典落語には笑いあり涙ありの人気の人情噺が数多く存在しますが、今回ご紹介する『文七元結』は落語初心者には是非聞いて頂きたい傑作人情噺です。
文七元結・・・中々内容を想像するのも難しい演題ですよね。
このサイトでは、落語の演目名で目次もご用意していますが、「時そば」や「饅頭こわい」など演題から内容がイメージしやすいものはご覧になって頂いてるようなのですが、『文七元結』のような難しそうな演目名の落語は初心者の方は、中々あらすじを見ようとはならないようです。
しかし、実は本当に面白い古典落語って意外にとっつきにくいタイトルの中に埋もれていたりするんですよ。
古典落語 文七元結
元結(もとゆい、もっとい)とは、髷(まげ)をの根を結い束ねる紐の事で、文七元結はさらに上等の元結。
演者によって様々な演出があり、それもまたこの噺のおもしろいところでもあります。
あらすじ
本所達磨横丁(ほんじょだるまよこちょう)に住んでいる左官の長兵衛は、腕はいいのだが博奕にハマってしまい仕事が疎かに。。。
もちろん収入もない訳で、家の中は火の車、、夫婦喧嘩は絶えない。。。
ある日のこと。
博奕で一文無しになった長兵衛が帰ると、一人娘のお久(ひさ)の姿が見えない。
「お前さんが、博奕ばっかりしてるから家出したんだよ」
女房の一言でまたも夫婦喧嘩に・・・
そんなところに、吉原から使いの者が来て、お宅の娘さん手前どもへおいでになってますよと言うもんだから、二人は大慌て、、すぐに駆け付けた。
親孝行のお久は、父親に真面目に働いてもらい、母親とも仲良くしてほしいから、借金返済の為に、女将に身売りを頼んでいたのだ。
話を聞いた女将は、えらく感動し、一年後の大晦日を期限に50両という大金を貸してくれるという。
ただし、大晦日を過ぎると、店に出して稼いでもらう事を条件に。。。
長兵衛はすっかり改心し家に帰る途中、吾妻橋で身を投げようとしている男に出くわした。
訳を聞くと、鼈甲問屋で使いを頼まれた文七、折角集金した50両をスリに取られてしまったという。
もうどうしようもないから、死んでお詫びをという男に説得を続ける長兵衛だが、いくら説得しても死のうとするので、しかたがなく懐の50両の金を取り出した。。
その50両の出どころを聞くと、さすがに男は借りれないと断るが、無理やり50両渡して長兵衛は帰っていった。
文七は店に戻り、集金した50両を差し出すと、旦那と番頭が顔を見合わせた。
金の入った文七の財布は店に届けられていたのだ。
というのは、碁が好きな文七は、集金に行った先で碁を囲む二人を見ていたら、ついつい見入ってしまい、財布を置いて慌てて帰ったというので、先方が先ほど届けてくれたというのだ。
それじゃぁ、この50両はどうした?という旦那の問いに全てを白状する文七。
翌日、鼈甲問屋の主人は文七をお供に、長兵衛の元を訪れた。
事情を説明し、50両を返した主人は、見ず知らずの若者の命を助ける為に大金を投げ出す長兵衛の心意気に惚れ、親類付き合いをと祝いの盃を交わし、お久の身請けもしてやったのだ。
自由の身となったお久。その後、お久と文七は夫婦になり、麹町に元結屋の店を出したという。
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