本日、ご紹介する古典落語は「粗忽の使者」になります。
古典落語の演目には、「粗忽長屋」「粗忽の釘」など粗忽と名の付く人気作品が多くありますが、今回ご紹介する「粗忽の使者」も、もちろん主人公は粗忽者(そこつもの)。粗忽者とは、そそっかしい人、おっちょこちょいな人という意味ですから、落語ファンだとタイトルを見ただけで笑える落語だろうと想像が膨らむ訳です。
さて今回はどんな粗忽者が出てくるんでしょうか?
粗忽の使者
この物語の主人公は、杉平柾目正(すぎだいらまさめのしょう)の家来で地武太治部右衛門(じぶたじぶえもん)という。
ただこの男。誠実な人柄なのだが、粗忽なうえに物忘れもひどい。しかしそんな所がお殿様に気に入られていたりして、何とか上手くやっている。
ある日、そんな侍の話を聞いた赤井御門守(あかいごもんのかみ)が、柾目正に治部右衛門をこちらによこしてくれと頼む。柾目正は面白がって治部右衛門を使いに出した。
あらすじ
さぁ張り切って飛び出した治部右衛門。応対に出たのは赤井家の重役・田中三太夫。何用か?と尋ねても治部右衛門は何も話さない。困った顔の治部右衛門を見て、三太夫がどうしたと尋ねると、なんと口上を忘れてしまったという。
これでは主君に申し訳が立たないと切腹すると治部右衛門。なだめる三太夫・・・
どうにか思い出せないかと三太夫に言われ、尻をつねられたら思い出すかもしれないと治部右衛門は言う。どうやら、幼少の頃から筋金入りの粗忽者だった治部右衛門は、何か忘れ物をする度に父親から尻をつねられていたという。
それを聞いた三太夫は、では私がと尻をつねろうとしたのだが、長年尻をつねられていたせいで治部右衛門の尻は鱗のように固くなっており全くびくともしない。切腹となっては大変だと、指先に力量のある人間を三太夫は探しに出ていった。
そんな話を聞いた一人の男が三太夫の前に現れた。話を聞いた三太夫はその男に着物を用意し、若侍に仕立てお使者の元へ連れて行くことを決めた。
「さて、まだ名前を聞いていなかったな」
「へへ。あっしは留っこです。とめっこ」
どうやら子供の頃からそう呼ばれていた為、名前を忘れてしまったらしい。
「うむ。さすがにとめっこはまずい。では拙者の名前をもじって中田留太夫という事にしよう」
さぁついに、田中三太夫が留っこを連れて治部右衛門の元へやってきた。
「さぁ早くケツをこっちに向けな。間違ってもこっちを向くんじゃないぞ」
留っこは隠してあったペンチを取り出し治部右衛門の尻をつねあげた。
「おぉぉ。これはお強い。。しかしえらく冷たい手でござるな」
「おっ。いいのかい。よしもっともっと。ギィ~」
「うーん。これは痛い!う~ん。お!思い出した!」
これを聞いた三太夫が飛び出して来た。
「よし!ではお使者の口上は?」
「う~ん。聞かずに参った」
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