今回、ご紹介する古典落語は「抜け雀」
私が初めてこの演目を聞いた時にはサゲでポカーンとなってしまい、聞いた後にいったいどうゆう事なんだろう?と色々調べたのを覚えています。
今回のお噺は少し解釈等難しい演目ですので少しでも分かりやすくご紹介させて頂こうと思っております。尚、物語のサゲ(落ち)に触れていますのでご覧の際はご注意下さいませ。
古典落語 抜け雀
舞台は小田原。夫婦二人で切り盛りしている小さな宿。
その宿の前を年のころ三十手前の汚い着物を着た男が通りかかる。
多くの客引きが見向きもしないその男を気の弱い主人が声をかけた。
「是非、私どもの所にお泊りを」
「うむ。これも何かの縁だ。泊まってもいいぞ。前金で百両預けておこう」
「いえいえ。こちらがお頼みしてのお泊りです。お勘定はお発ちの時で結構です。」
客の景気のよい台詞に気を良くした主人だが、あの身なりで金を持ってるはずはないと女房は疑っていた。
あらすじ
泊まってからというもの、朝から晩まで酒を浴びるほど飲んで、後は寝るだけ。そんな日が十日も続いたとなったら女房が黙ってはいない。
この男やっぱり怪しいからとりあえず五両でも貰っておいでと女房につつかれて、しぶしぶ主人が清算を求めにいくのだが、男は堂々と金は無いと言い放った。
がっくりの主人。
なんでも男は絵師だという。借金のかたに描くというのだが、名前のある方ならともかくあんたの絵では。。。。
男は近くにあった、一文無しの客が借金のかたに置いていった衝立(ついたて)に書いてやろうと言う。
絵が無ければ売れるから勘弁してくれという主人だが、硯(すずり)を用意しろだの、墨をすれだの大騒ぎ、、男は衝立に一気にに何かを描き上げた。
「いったいこれは何です?」
「お前の眉の下に二つ付いているのはなんだ?」
「何って目ですが。。。」
「本当に目か?見えぬならくり抜いて銀紙でも貼っておけ。これは雀だ。五羽いるだろう。一羽一両で計五両だ」
唖然とする主人。そんな主人に男は必ず戻るから、くれぐれも許しなく衝立を売らないようにと言い残し去っていった。
翌朝の事。主人が二階へ上がり雨戸を開けるとチュンチュンと鳴きながら衝立から雀が飛び立って行き、餌を食べたかと思ったらまた戻って来て衝立にピタリと収まった。
驚いた主人。
しかし、これが小田原で話題となり「雀のお宿」と呼ばれお店は大繁盛となったのだ。
そしてついには殿様の耳にまで入り千両で買いたいとの言葉も頂いた。
そんなある日、是非絵を見たいと初老の武家が訪ねてきた。主人は案内すると、「未熟だな」と一言。なんでも雀が休む為の場所がない、止まり木を書いてやろうというのだ。
嫌がる主人だが、硯を出せだの、墨をすれだの・・・
「さぁ、書けたぞ。これでもう安心だ」
「何ですか?これは・・・」
「お前の眉の下に二つ付いてるのは何だ?見えぬなら・・・」
「銀紙でも貼っておけでしょ。一度言われてますんで。あー鳥かごですかこれは、なるほど。。。」
翌朝、雀は餌を求めて飛び立って、ちゃんと戻って鳥かごに収まった。これがまた評判になって、再びお殿様が二千両で売ってくれと言い出した。
主人は売りたいのだが、約束がある為に売れないでいた。。。
そんなある日、あの時の絵師が店を訪ねて来た。話をすると、お殿様に衝立を売ってもいいとの事で主人は大喜び、、しかし、初老の絵師が鳥かごを書いていったと言うと男の顔色がみるみる変わった。
男は急いで二階に上がり衝立をしばらくじっと見つめていた。
「ご無沙汰しております。度重なる親不孝をお許し下さい」
「先生、どうしたんです?」
「いや、この鳥かごを書いたのは私の父で」
「そうだったんですか、親子で名人かぁ。いやでも親不孝ではないでしょう。むしろ親孝行ですよ」
「いやいや、衝立を御覧なさい。親をかごかきにさせた」
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駕籠を担ぐ人。職業。素行の悪い人が多かった為、当時の身分が低かった。
(鳥かごを描く事と駕籠かきをかけた訳です)古典落語のあらすじを題名で検索!