名作 古典落語「鮑のし(あわびのし)」落語 あらすじ サゲ(落ち) 解説

本日、ご紹介する古典落語は「鮑のし」

落語を聴いていると難しい言葉や、表現に多々出会う事があります。今回の鮑のしも言葉を知らないで聞いていた時はポカーンとしたものです。

なるべく分かりやすく解説していきますので、歴史も含め楽しんで下さい。

古典落語 鮑のしは物語のサゲ(落ち)ネタバレを含みます。ご覧の際はご注意下さい

古典落語 鮑のし

演題でもあります「鮑のし」ですが、ご祝儀で使う袋を熨斗(のし)袋、熨斗袋にかける紙を熨斗(のし)紙と言いますが、この熨斗というのは、のしアワビを略したものになります。

というのも、歴史を辿ると昔は良い事があると高級品であるアワビなど海産物を贈る習慣があったそうです。そこからアワビを伸ばして干して乾燥させて贈り物に付けるようになり、現在ではその名残りで、紙などで代用してのしあわびの飾りを再現しているのです。

普段何気なく使っているものでも、歴史を辿るとしっかり意味があって面白いですよね。

あらすじ

甚兵衛は道楽者といった言葉が見事にはまる男。今日も稼ぎが無いのに腹が減った飯が食いたいと女房に泣きつく。

「飯が食いたきゃ隣家に行って五十銭借りてきな。その金で魚屋に行って鯛の尾頭付きを買ってくるんだ。今夜ね、大家さんの家で婚礼があるんだよ。祝いを持っていけば一円のお返しがくるはずだから、それで隣家に五十銭返して、残りで米を買ってくればいいのさ」

なるほど。さっそく隣家に行って五十銭借りて来た甚兵衛は魚屋に向かった。

しかし、鯛は高くて手が出ない、、仕方なく鮑(あわび)を三杯買って帰って来た。

甚兵衛が帰ってくるなり女房は口上の稽古を始めた。

「いい天気でございます。承りますれば、若旦那様に嫁後様がおいでになるそうで、おめでとうございます。いずれ長屋から繋ぎ(祝儀)が参りますが、これはそのほか(個人的な祝い)でございます」

世の中を適当に生きている甚兵衛にこのような口上が覚えられる訳が無いのだが、一応稽古をして大家の家に向かった。

いざ大家の前で口上を始めるも、案の定出来は散々。「ウケマタワリ」だの「こんちわこんちわ」だの全く言葉が出て来ない。でも祝い物を出せば何とかなるだろうと思っていたのだが、大家は大変な剣幕で怒り出してしまった。

何でも、アワビというのは片貝ともいい縁起が悪いというのだ。また磯の鮑の片思い(鮑は巻貝な為、対になる貝が無い。一方通行の片思い)という言葉だってあると言って追い出されてしまった。

表でガックリ肩を落としていると偶然通りかかったのは甚兵衛の親分。事情を聞くと知恵を貸してくれた。

「もう一度、大家の家に鮑を持っていくんだ。そこでお前の家では祝い物についてきた熨斗(のし)を剥がして返すのか?ってな。のしってのは鮑から作るんだぞ。その根本が何故受け取れねぇ。一円じゃ安いな五円よこせってケツまくってやれ」

「ケツはまくれねぇなフンドシしてねぇから・・・」

何はともあれ再び大家の家。

教わった啖呵をたどたどしくも切っていく甚兵衛、ここで尻を出してやりてぇが事情があって今日は出来ねぇ。

大家は甚兵衛の言葉に偉く感心してしまった。

「よく物事を知っているな。もう二円あげるから一つ教えてくれ、のしを書くとき『乃し』という字が書かれたのがあるがあれは何だ?」

「あぁ、あれは鮑のおじいさんです」

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