以前に廓噺のおすすめをいくつかご紹介させて頂きましたが、今回ご紹介する「お直し」も有名な廓噺の一つです。
ただ、この「お直し」普通に聞いても恐らく意味が分からない話だと思うので、初心者の方にもおすすめ廓噺のまとめには入れませんでした。
普段はサゲ(落ち)や解説は落語の楽しみを奪ってしまう可能性があるので、あまりしませんが今回は話を分かりやすくする為に解説を入れようと思っています。
あくまで個人的な解釈だったりするので、違う可能性もありますが、落語は人それぞれ色んな解釈で聞くものだと思ってますので、そこはご了承下さいませ。
初心者の方にも分かりやすいおすすめ廓噺はこちらからどうぞ
古典落語 お直し
まず題名の「お直し」この意味が普通分からないですよね。
昔は、線香一本の時間で料金がいくらと決まっていました。ですから、燃え尽きてしまうとそこで終わってしまう為、燃え尽きそうなタイミングで主人が「直してもらいなよ!」と声をかけて延長を勧めたと言われています。
分かりやすく現代風に言うと「ご延長いかがなさいますか?」みたいな感じですかね。
あらすじ
吉原の張り見世では、格子の内側に着飾った女が並んでいて、売れっ子ともなるとすぐに客がついていなくなる。
だんだんと女の子がいなくなって、残りが誰もいなくなって自分一人になってしまうとこれはみじめである。店じまいになり、客がついてないなんて事になると、ご内証に行ってご主人に「まことに申し訳ありません」と詫びを言う。主人に睨まれたりなんかすると、身が細る思いで、そんな日が何日も続いてしまうといたたまれない。
店で働く若い衆。そんな悩める花魁を心配し、あれこれ相談にのったり、一緒にご飯を食べたりしているうちに二人はいつしか深い仲に。
しかし、いつまでも隠し通せる訳もなく主人に呼びつけられる二人。廓では同業者同志の色恋はご法度なのです。
長い説教の後、ほんとうに惚れあってるのなら証文を巻いてやるから、二人ともここで働けばいいと許してくれた。
女房の方は女郎を引退。「やりて」つまり女郎の世話役となり、二人で仲良く稼ぐ事が出来るようになった。
ごはんも主人のところで食べるので、出銭がなく貯まるいっぽう。女房の方は張り合いが出て一生懸命に働くのだが、金が入るとだめになってしまうのは男のだめなところ。
女に博奕に手を出してしまう。こうなってしまったら、もう手が付けられない。ついには一文無しになってしまった。
しかたなく「蹴転 けころ」という最下級の女郎屋をやる事にしたのだが、女郎が雇えないので女房が女郎を、亭主が若い衆をやる事になるのだが、当然、女房は反対するが、生きていく為にと泣く泣く承知する。。。
ただ商売上、男をその気にさせなければならない訳で、亭主にヤキモチだけは嫌だよと念を押す女房。
「けころ」は線香の本数で金を計算するので、なるべく客を引きとめておかなければならない。
「直してもらいなよ!」
と声をかけて線香を増やしていくのである。
最近まで見世でに出てたくらいの女。「けころ」では掃溜めに鶴で一日目にしてすぐに客がついた。
しかも、客の男が気に入って一緒になってほしいとせまっている。
『浮気なんかしたら嫌だよ。お前さんが好きだから』
そんな会話を聞いていた亭主は案の定ヤキモチを焼いている。
「直してもらいなよ!」
『直して頂戴。お前さんと夫婦になりたいよ。でもあたしには借金があってね』
「どのくらい借金があるんだ」
『三十両』
「そのくらいなら明日持ってきてやるよ」
「直してもらいなよ!」
話を聞いている亭主は、もう気が気でない。
結局、客が帰った後はやはり喧嘩になってしまう。
ただそれもお互いを思うがあまりの事。結局仲直りし愛を確かめあったところに先ほどの客が引き返してきて。
「直してもらいなよ!」
おすすめとサゲ(落ち)の解説
「お直し」といえば五代目古今亭志ん生さんがあまりにも有名ですね。
私も志ん生さんのCDは何枚も持っていますが、個人的にはもっと現代の噺家さんの「お直し」を聞きたいなと思うんです。
私は五街道雲助さんの落語が好きでよく聞くのですが、雲助さんの「お直し」聞いた事がない方は是非聞いてみて下さい。本当におすすめですよ。
サゲは素直に、夫婦になろうと約束した客が先ほどまでの亭主の立場と逆転しまったと考えるのが自然なのではないでしょうか。
最初の夫婦になろうと約束している時に、ヤキモチを焼いた亭主の「直してもらいなよ!」が上手くサゲにきいてくるんですよね。