名作 古典落語「柳田格之進」落語 あらすじ・解説

本日、ご紹介する古典落語は「柳田格之進」演題でも分かる通り武士のお噺です。

五代目古今亭志ん生、三代目古今亭志ん朝が得意としていたのはあまりにも有名ですが、こういった人情噺は演者によって全く違う噺に聞こえる事があります。しんみり終わらす噺家もいれば、ハッピーエンドで終わらす噺家もいるのです。「柳田格之進」って前に聞いた事あるって方も演者が違えばまた新しい「柳田格之進」に出会えるのです。ここが落語の魅力でもあり楽しさでもあるのです。

今回の古典落語「柳田格之進」は物語の結末にふれています。ご覧の際はご注意下さいませ。

古典落語 柳田格之進

柳田格之進は文武両道、清廉潔白(せいれんけっぱく)な人格者。

元は江州彦根の藩主であったが、正直すぎる性格が災いし人に疎まれ、上役の讒言(ざんげん)によって浪人した。

妻には先立たれ、現在は19歳になる一人娘のお絹と浅草、安倍川町の裏長屋に住んでいる。

あらすじ

格之進は、何故自分がこんな状況になっているのかを悩んでいた。そんな父を見かねた娘は、気晴らしにと碁会所に行くことを勧める。

何日か通っていると、浅草馬道の両替商、萬屋源兵衛と知り合いいつしか毎日打つ仲になっていった。

ある日、手前の家に起こし頂ければ落ち着いて打てますがと源兵衛からの誘いがあり、離れで碁盤を囲む事になった。酒もご馳走になり、格之進はいつもより遅い帰宅となった。

「旦那様。先ほどお渡しした50両はどうしました?」

碁の最中に預けた50両はどうしたと番頭が源兵衛に尋ねる。

確かに受け取った記憶はある。しかし離れを探させるが見当たらない、、格之進を疑う番頭だったが、源兵衛はあの方に限ってそんな事はしない。50両は私の小遣いとでもしておけと言い放った。

しかし翌朝、納得のいかない番頭は、格之進の元を訪ね50両の一件を問いただしてしまったのだ。

身に覚えのない疑いをかけられ激怒する格之進だったが、奉公に届けると言われると、奉公所の取り調べを受ける事は不名誉だと明日の昼過ぎまでには金は用意すると言い番頭を帰した。

娘を使いに出して腹を切ろうと考えていた格之進。しかしそんな父を娘は見通していた。

「盗んでいないのならお金は必ず出で来るはずです。自分が廓(くるわ)に身を沈めてお金は用意するので腹だけは切らないで下さい。」

翌日、格之進は金を番頭に渡した。私は無実だ、もし無くなった金が出てきたらどうする。

「金が出てくるもんなら、この首を差し上げますよ。主人源兵衛の首も一緒にね。」

番頭は事のいきさつを源兵衛に話すと、源兵衛は怒り狂い番頭を叱り飛ばす。謝罪に行くと格之進の家に向かうも、すでに引き払われた後だった。その後も源兵衛は格之進を探すのだが見つからなかった。

月日は経ち、暮れの大掃除。無くなったと思われていた50両が離れで見つかった。源兵衛が隠していたのをすっかり忘れていただけだったのだ。

源兵衛はすぐさま格之進を見つけた者には褒美を出すと全員に探すよう命じたが、なかなか見つかるものでもない。

年が明けて4日目、番頭がばったりと柳田格之進と出会ってしまったのだ。話を聞くと現在は帰参が叶い江戸留守居役となって出世していたのだった。番頭は震えながら、50両が出てきた事を格之進に話す。すると格之進は笑って明日、店に参るから首を洗って待っておけと番頭に言い放った。

翌日。

格之進は両名を切り捨てねば娘に申し訳が立たぬと刀を振り上げると、源兵衛は全ては私が命じた事、私の首だけで勘弁して欲しいと訴える。番頭は私が勝手にやった事だと訴える。

庇い合う二人の情に、斬る事が出来ない格之進。ならばと刀を振り下ろし碁盤を真っ二つに。

格之進は原因となった碁盤を切る事によって二人を許したという。

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