タイトルにもなっている「百川」は、かつて存在した日本橋の浮世小路の料亭百川がモデルとされています。明治元年には廃業してしまったらしいですが、実際にこの店で起きた事を話に起こしたなんて説もあったり、落語では珍しい歴史のある演目となっています。
古典落語 百川
この噺には難しい言葉が数多く登場しますが、初めて聞く人には意味が分からないであろう四神剣(しじんけん)について解説をしておきます。
別の名を四神旗(しじんき)とも呼ばれるが、「東の青龍」「西の白虎」「南の朱雀」「北の玄武」という東西南北の神の姿を描いた4本の旗の先が剣の形になっている事から四神剣と呼ばれています。
大祭りには欠かせないもので、落語「百川」では、各町内会が一年単位で四神剣を管理する当番制だったとされています。
あらすじ
日本橋の浮世小路の料亭「百川」に田舎者の奉公人、百兵衛がやってきた。田舎者という事もあり素直で人が良さそうなので主人は気に入っていたが、田舎訛りがひどく会話がままならないのが悩みの種でもあった。
そんなある時、二階の座敷で手が鳴ったが、髪結いが来て女中達は髪を解いてしまっており、たまたま羽織を着ていた百兵衛が御用を承る事になった。
二階の客は魚河岸(かし)の若い衆達で、彼らは祭りの際に隣町から借りた四神剣を、遊ぶ金欲しさに質入れしてしまっていて、祭りが近くなってきたのでどうやって請け出すか話し合っていたのだ。
そこへやってきた百兵衛。「あたくし、この主人家の抱え人でごぜぇましてなぁ」と挨拶するも。ひどい訛りのせいで、四神剣の掛け合い人だと若い衆達は聞き間違えってしまった。
若い衆は皆で言い訳を並べつつ、そのうちのひとりが、百兵衛を言いくるめようと酒をすすめるが百兵衛は酒が飲めない。。
それでは何か甘い物をとクワイのきんとんを差し出すも、「これがクワイのきんとん?野郎化けやがったな」と百兵衛が言うと、これも質入れしたことへの当てこすりと勘違いした若い衆達は、貴方を男と見込んでお願いしてるんですからどうか飲み込んで頂きたいとお願いする。
言われた百兵衛は言われた意味が分からない為、きんとんを呑みこめと言われたと思い苦しみながらも何とか飲み込んだ。これでようやく若い衆達はホッと胸をなでおろしたのだった。
一階に降り主人に話すと若い衆にからかわれたんだろうと言う。ちゃんとしておけば可愛がってもらえるともう一度、二階に上がる百兵衛だった。何とか訛りを抑えて若い衆の誤解を解く事が出来たのだが、百兵衛が主人家の抱え人だと分かると若い衆達はある頼み事をする。
『長谷川町の三光新道に住む常磐津語り歌女文字(かめもじ)を呼んできてくれ、今朝から魚河岸の若い衆が4、5人来てます』と伝えろと。
「かめ・・・何でしたっけ?」
『名がわからなかったら、三光新道で頭にかの付く名高い人だと言えばわかる』
百兵衛は店の外へ出た途端に名を忘れ、間違えて外科医の鴨池玄林(かもちげんりん)を訪れ伝えてしまう。
今朝がけに、魚河岸の若い方が4、5人来られやしたと伝えたつもりだが、訛りで袈裟懸けに斬られたと伝わってしまう。外科医の鴨池玄林は慌てて駆けつけるも、全ては百兵衛の間違いだった事が分かる。
若い衆は『お前のように抜けてるやつは見た事がねぇ』と罵る。
「どんなけ抜けてやすか?」と百兵衛
『頭から終えまで全部だ』
すると百兵衛は指を折りながら・・・「全部じゃぁねぇたった一字だ」
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